Sato Law Office

Apartment Lease

賃貸問題

まずはじめに

マサチューセッツ州でアパート等の賃貸契約を結ぶ際、またアパート生活中に注意しなければならない事を簡単に説明します。日本とは違った法律や習慣があり、はじめての方にはちょっと難しいことだらけですが、これを参考にしてアパートのトラブルの無いボストンの生活を楽しんでください。 

マサチューセッツでの賃貸に関する法律のほとんどは、大家さんが住んでいる2世帯住宅の一部(一階部分など)を借りている場合はあてはまりませんので注意してください。賃貸問題に関する法律は州ごとに違っていますので他州での問題の場合はその州で弁護士に相談してください。また、法律は常に変わっていますので、問題が起こった場合は必ず賃貸問題に詳しい弁護士に相談してから行動してください。


アパートを探す時 

事情によっては難しいかもしれませんが、アパートを探す時はアパートの中を時間をかけて調べることが大切です。出来れば、同じアパートに住んでいる人に意見を聞くのもいいかもしれません。大家さんなどに急かされるでしょうが、これから何年間も住むことになるのですから慎重に隅々まで見て回って下さい。マサチューセッツでは大家さんがテナントを選ぶ際に人種、肌の色、宗教、性別、年齢、精神的肉体的障害などを理由に入居を拒むことは違法とされています。子供のいる家族の入居を拒むことも違法です。また、古い建物などで鉛入りのペンキを使っている場合に子供の入居を拒む大家さんがいるかも知れませんがこれも違法です。大家さんは鉛ペンキを除去した後、この家族を入居させなければならないことになっています。

気に入ったアパートが見つかった時には入居の手続きをすることになりますが、この際にはすべて書いたものをもらってください。もう一つ大事な事は、すべての記録を保存しておくことです。あとから問題になった時に証拠になります。前にも書きましたが、これらの法律は大家さんが住んでいる2世帯住宅を借りる場合はあてはまりませんので注意してください。


入居の時 

気に入ったアパートが見つかったあとは、ほとんどの場合は大家さんとの間でリース契約を結ぶ事になります。リースは法的効果を持った契約ですのでしっかり読んでからサインしてください。その際に理解出来ない事、質問などがあったら大家さんに説明を求めてください。また、納得の行かない事、こちらからの希望などがあった場合は、口約束だけではなく、リース契約書にその旨を記入してもらい、そこに大家さんとテナントのイニシャルを記入してもらってください。アメリカは契約社会ですが、一般常識をはずれた反社会的な条項または州法に触れる条項は違法ですので無効です。リースに書いてある違法な事項は無効ですが違法な部分以外は有効です。

大家さんはテナントから次のものを受け取る事ができます。

  1. 入居する月の家賃
  2. 最後の月の家賃
  3. 一ヶ月分の家賃に匹敵するセキュリティーデポジット
  4. 新しい鍵を付ける費用

一ヶ月分以上のセキュリティデポジットの支払いを強制することはできません。アパートを確保するためにデポジットを払った場合はその金額を入居時に支払う総額から差し引く義務もあります。支払ったものすべてのレシートをもらうことも忘れないでください。セキュリティーデポジットを受け取った場合は大家さんは10日以内にStatement of Conditionと呼ばれるアパートの状態を記載したものをテナントに提出する義務があります。テナントは間違ったところがあった場合は15日以内に返答する必要があります。15日以内に返答しないと大家さんの記載した事実をすべて認めたことになり、退去後修理代を請求される場合もあります。大家さんにはこの他にセキュリティーデポジットと最終の月の家賃に対して利子を支払う義務もあります。


賃貸契約の種類 

賃貸契約の種類は大きく分けて2種類あります。まず、リース契約を結んでいるタイプの賃貸契約です。ほとんどの場合はこれにあてはまると思います。

リース契約は通常1年間ですが、その間は記載してある事項を勝手に変更することは出来ません。ですからサインする際はしっかりと読んで理解する必要があります。大家さんはテナントに両サイドのサインがはいったリース契約書を30日以内に手渡さなければなりません。

リース契約のなかには1年間の後、自動的に更新する条項が含まれるものもあります。この場合はリースに含まれる条項がすべてもう1年間延長されてしまいます。もしリース延長をせずアパートを出たい場合は、リースの指摘する期間前に更新する意思の無い事を書面で伝えなければなりません。大家さんがこの手紙を受け取った事を確認できる方法を使う必要があります。これを怠るともう一年間のレント支払いの義務が発生します。リース契約の中には家賃が遅れた場合のペナルティーを取ることを記載してあるものもありますが、30日以上遅れた場合以外は違法ですので無効になります。またリースにこれが記載されて無い場合も違法ですので無効です。 

もう一つの賃貸契約は Tenants at Will と呼ばれるものです。これはリース契約は結んでいなくても、大家さんから許されて住んでいる場合、または同じところに3ヶ月以上すんでいる場合が当てはまります。1ヶ月ごとに更新されるリースと理解するとわかりやすいかも知れません。リース契約を1年間結んだあと自動的にこのタイプの賃貸契約になるものもあります。リース契約と違って大家さんは30日以上前から知らせればいつで家賃を上げることが出来ます。

1ヶ月ごとの契約ですので、大家さんからも、テナントからも1サイクル以上の知らせを出せばいつでも契約をやめることができます。注意しなければならないのは、この知らせは手紙などの書面ですることと、1サイクル以上の知らせが必要な事です。例をあげると、6月30日でアパートを出たい場合は5月31日までに知らせを出さなければなりません。6月1日まで待ってしまうと、6月分と7月分の家賃を支払う義務を負う事になってしまいます。この条件さえ満足させればいつでもアパートを出る事が出来ます。


大家の権利と義務 

大家のなかには、アパートの所有者/管理者であるのでいつでも大家さんの好きな時にアパートに入る権利がある、と思っている人もいます。これは間違いで、いくら大家さんでもテナントの住居に入る時にはそれなりの理由と、ある程度事前に通告・予告をする必要があります。通常は一日前にテナントに知らせてお互いに都合の良い時間にする義務があります。

大家さんには以下の理由であなたのアパートに入る権利があります。

  1. アパートを調べるため
  2. 修理をするため
  3. あたらしいテナントにアパートを見せるため
  4. 裁判所からの命令
  5. アパートが放棄されている場合

これ以外の理由で大家さんがアパートにかってに入って来た場合は不法侵入にあたります。警察を呼ぶ事も出来ます。

大家さんには様々な義務もあります。以下はその義務違反の例ですが、もしもあなたの大家さんがこれに反する行為をしている場合は 30 day Demand Letter と呼ばれる手紙を出し、それでも直らない場合は実際の3倍の損害賠償請求と弁護士費用を裁判で得る事もできます。

  1. 建築保健衛生法違反のアパート
  2. 当然の権利を行使したテナントに対する復讐
  3. 法律違反の料金やペナルティー
  4. 通知を受けたにも関わらず修理しない
  5. 安心して静かに暮らせる環境破壊
  6. 賃貸契約違反
  7. セキュリティーデポジットの不正使用
  8. 違法条項の入ったリース契約
  9. 裁判所の命令以外の強制退去
  10. 30日以内にリースのコピーをテナントに渡さない

テナントの権利と義務

テナントには家賃を支払う義務がありますが、大家さんにはテナントに安心して静かに暮らせる環境を提供する義務があります。アパートに何かの不具合があってこまっている時にはお住まいの町の保健局などに電話をして、大家さんがこの義務を満たしているかどうかを問い合わせることもできます。

アパートに何か問題が発生した場合はまず大家さんに書面で連絡をして修理をたのみます。問題の程度によりますが通常1週間程度で修理する義務があります。もし何度連絡してもまったく修理してくれない場合は保健局などに電話して詳しい調査をしてもらってください。検査員が問題を記録して大家さんに修理の連絡をします。大家さんがそれでも修理をしない場合は家賃の支払いを止めることもできます。その際にきちんと大家さんに連絡を取った事を証明しなければなりませんから、コピーを忘れずに。家賃の支払いを止めても、支払いの義務はありますので家賃分はきちんと取っておかなければなりません。

大家さんが保健局からの命令でも修理をしない場合はテナントは自分から修理をたのんで、その費用を家賃から差し引くこともできます。細かい条例がからんできますので、専門家に相談してください。火事や水漏れの場合、大家さんはアパートを元の状態に戻す義務はありますが、テナントの持ち物はテナントが保険をかけて万一に備える必要があります。

さまざまな理由で大家さんはテナントをなんとか追い出そうとする場合もありますが、強制退去の命令は裁判所からの命令でしか出来ない事を覚えておいて下さい。強制退去の手続きと対処方法は複雑ですので弁護士に相談してください。


退去の時

リース契約の多くは自動的に更新する条項を含んでいます。その場合は、通常そのなかにリースの更新をしないで、アパートを出る時にどの程度以前から大家さんに知らせなければならないかが記載されています。1-2ヶ月間が普通です。必ず書面でその知らせを送る事と、受け取りの証明書が付いているものが必要です。これをまもらないともう一年間の家賃を払う義務を発生させる事になる可能性があります。

自動更新の条項が含まれていなくても、一年を過ぎた時点でTenants at Will に契約が変わる、など様々なリースがありますので注意が必要です。

セキュリティーデポジットは退去後30日の間にテナントに返還されなければなりません。大家さんがアパートにダメージがあったので減額した場合などは30日以内にその詳細をテナントに知らせなければなりません。注意しなければならないのは、通常の使用による消耗は減額することが出来ないと言うことです。30日以内に大家さんから知らせが届かない時には大家さんはセキュリティーデポジットを全額返還しなければなりません。

後々の問題を防ぐためにも、退去時には大家さんにきちんと立ち会ってもらい、Statement of Condition にお互いにサインするのが賢明です。

セキュリティーデポジットが大家さんから30日しても返還されない場合は裁判をして3倍ダメージと弁護士費用を得る事も可能です。


最後に

ここに記されている事は一般的な場合で実際のケースは付随する事情によってそれぞれ異なりますので必ず専門の弁護士に相談してください。

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